0点の商品が入っています

※本の検索

(タイトル、著者、キーワード等)

ブログ - Words from Flying Books

SUBWAY MAPS -地下鉄から墓場まで

bd001

世界中の地下鉄のMAPを並べて見比べることが出来たとしたら、そのトポロジカルに圧縮されたカラフルな画像にとてもわくわくするはずだ。アルファベット、漢字、数字、線、点といったさまざまな記号に溢れる情報の羅列にゲルハルト・リヒターのカラーフィールド・ペインティングや、モンドリアンやワシリー・カンディンスキーの抽象絵画の美しさにも匹敵する感覚を味わえる。そこには表現の意識の無い機能美が支配し、イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機コンコルドのようにエレガントだ。必要最小限まで絞り込み、余分なモノを一切削り落とす時、そこには最初から、それしか考えられないフォルムが現存する。カラフルでポップな地下鉄のMAPのイメージからリアルな地下鉄のイメージに変換すると、そこには全く違った世界が見える。特にニューヨークの地下鉄は、さまざまな危険なウソかホントか分からない物語を生み出し、私達の脳髄を刺激する。たしか、「裸のランチ」の冒頭もジャンキーの主人公が警察から逃げるために地下鉄に乗り込むシーンからだったはずだ。
bd004

地下鉄といえば、ウォーカー・エヴァンスがニューヨークの地下鉄の席に座る乗客を隠し撮りした写真が有名だが、今回はブルース・デヴィッドソンのギラギラ・ギトギトした写真方を選ばしてもらう。ブルース・デヴィッドソンといえば、幾多の写真家の中でも、特に被写体に真っ正面から堂々と向き合う真摯な写真家の数少ない一人である。

ハーレムの厳しさを撮影した「East 100th Street」や、ブルックリンのストリート・ギャングをドキュメントした「Brooklyn Gang:Summer 1959」、そしてマッド・マックス化した無法地帯のニューヨークの地下鉄を体当たりで撮影した強烈な写真集「Subway」は特に魅力だ。

bd0031bd002

「Subway」はその厚化粧のようなカラー写真の迫力が胸騒ぎや苛立ちを感じさせる。なんというか、見ている者に安物の香水の臭いを想起させたり、背中にナイフを突き付けられてカツアゲされているような恐怖感を視覚を通して訴えかけてくる。ブルース・デヴィッドソンがインタビューで「これはモノクロでは無く、カラーの猥雑な感じが必要だと」語っていたことが、改めて見るとやはり納得である。車内一面の落書きと、そこに座る黒人女性のポートレイトは、電車が出す騒音や低下層に生きる人々の心の苛立ちを良く具現化しているし、仲間とツルんでスカッとするために喧嘩するしか考えてないような、顔に傷のある若者達の現状がそのまんまストレートに表現されている。この魅力的だが危険一杯の空間を覗いてみたいけど、勇気のの無い方は是非、この写真集でその感覚を創造し満足してもらいたい。
bd005

ブルース・デヴィッドソンの「Subway」を眺めていると、一つの映画を思い出す。それは巨匠ブライアン・デ・パルマ監督の「殺しのドレス」である。この映画で、主人公がをブロンドのデカイ剃刀を持った女装した犯人に主人公が追いかけられる地下鉄のシーンは、80年代前半のニューヨークの地下鉄の雰囲気、いや、アメリカの雰囲気を共有している。その不安に満ちたフィルムは、天下のアメリカが下から上へと追いかけてくる日本やアジアの国々に対する恐怖であり、帝国の綻びの始まりである。しかし、この時代のフィルムに焼き付けられた不安や恐怖、その不安から出てくる”マッチョ・アメリカ”の強がりの態度は妖しく輝き、今でも僕らを魅了する。写真であれ映画であれ、恐怖や不安は人々にいち早く感染する。
bd006

ハヤシユウジ

bd-0071
『Subway』
Bruce Davidson ブルース・デヴィッドソン
初版 HC カバー
Aperture 1986
¥25,000

bd-008
『Photographs』
Bruce Davidson ブルース・デヴィッドソン
献呈サイン入 HC カバーヤケ
Agrinde 1978
¥48,000

bd-010
『Photographs』
Bruce Davidson ブルース・デヴィッドソン
サイン入 SC セロテープ跡 裏表紙少イタミ
Agrinde 1978
¥23,000

bd-0092

『East 100th Street』
Bruce Davidson ブルース・デヴィッドソン
SC 少イタミ 小口ヤケ
Harvard University Press 1970
¥25,000

bd0121
『Portraits』
Bruce Davidson ブルース・デヴィッドソン
初版 HC カバー
Aperture 1999
¥6,000

2013 年 8 月 31 日 | comment
TrackBack URI : http://www.flying-books.com/blog/wp-trackback.php?p=3418

コメントはまだありません »

コメントはまだありません。

コメントをどうぞ